EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ

「ここは僕専用の特別な舞台」

その部屋には巨大なスクリーンがあった。


(うわぁ…映画館みたい)


観客席は二人がけのソファーが一つと少ないが、この空間は完璧なシアターだ。

「どれにしようか。初心者むけなら有名なやつがいいかな」

部屋の隅に積まれているDVDを手に取りながら悩む白魔。

「作曲家が闇人のやつもいいけど、君が見るには刺激が強すぎるかな…。人間のなら………あ、カルメンにしよ。これなら有名だし、悲劇だし、プリマドンナも恋人に殺される。完璧だ。君、カルメンは知ってる?」

「タイトルは…聞いたことあります」

「曲は知らない?トレアドールとかハバネラとか」

「え…」


(し、知らない…!)


だんだん自分の無知が情けなくなってきた。

恥ずかしそうに俯く小鳥に気づき、白魔はクスリと笑う。

「無知を恥じることはないよ。知らないなら知ればいい話さ」

部屋の照明が落ち、スクリーンが明るくなった。

白魔は小鳥の手を取り、ソファーへと導く。

第一幕が始まった。


< 62 / 505 >

この作品をシェア

pagetop