EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ
「ここは僕専用の特別な舞台」
その部屋には巨大なスクリーンがあった。
(うわぁ…映画館みたい)
観客席は二人がけのソファーが一つと少ないが、この空間は完璧なシアターだ。
「どれにしようか。初心者むけなら有名なやつがいいかな」
部屋の隅に積まれているDVDを手に取りながら悩む白魔。
「作曲家が闇人のやつもいいけど、君が見るには刺激が強すぎるかな…。人間のなら………あ、カルメンにしよ。これなら有名だし、悲劇だし、プリマドンナも恋人に殺される。完璧だ。君、カルメンは知ってる?」
「タイトルは…聞いたことあります」
「曲は知らない?トレアドールとかハバネラとか」
「え…」
(し、知らない…!)
だんだん自分の無知が情けなくなってきた。
恥ずかしそうに俯く小鳥に気づき、白魔はクスリと笑う。
「無知を恥じることはないよ。知らないなら知ればいい話さ」
部屋の照明が落ち、スクリーンが明るくなった。
白魔は小鳥の手を取り、ソファーへと導く。
第一幕が始まった。