精一杯の背伸びを
突然のことで、彼の名前を呟いただけで、口が渇き、言葉が出てこなかった。そして立ち上がることすらできなく、座り込んだまま彼の顔を見ていた。
当然、笑顔で声をかけようと決めていたことは頭からすっかり消えていた。
彼は訝しげに、座り込んでいる私を見ていたが、もしかして、と目を大きく見開いた。
「本当に、小春か?」
私は未だに言葉が出なくて、そうだ。と首を大きく縦に振った。
「現実か……」
彼は呟き、驚いたと言わんばかりに髪をかき上げた。
「とにかく、そんなところに座り込んでるな」
彼は私を引っ張り上げ、部屋の鍵を開けた。
再会は突然。計画は計画でしかない。そんなフレーズが頭に浮かんだ。
彼が熱い紅茶を入れてくれた頃には、なんとか平常心を取り戻していた。
「しかし、小春がこんなところにいるなんてな。今年に入って一番驚いた」
彼は上着とネクタイをソファーに掛けて腰を下ろしてから、口元を吊り上げ、付け加える。
「まだ3ヶ月しか経ってないけど」
そんな冗談に私は軽く笑い、澄まし顔で返した。