精一杯の背伸びを









 お客さまだからと、ソファーを勧められたがそれを断る。


 お客さま扱いしないで欲しい。


 私もお手伝いします。


 そう言うと。


 佳苗さんは、ぺこぺこ頭を下げた。


 ごめんなさいと。


 その意味は何だろう?


 お客さま扱いしたこと?


 手伝わせること?


 それとも。


 彼を私から奪ったこと?













「もう、これ捨てますね。恥ずかしい」




 肉じゃがが入っていたお鍋を慌てて私から遠ざける。


 見られたくないのだろう。




「私も良く失敗するんです。味が染込んでるし、その材料でもう一度作りましょう」




 彼女を励まし、お鍋を覗く。



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