精一杯の背伸びを
送っていくという仁くんの申し出を断ろうとしたが。
佳苗さんの手前、強くつっぱねることができなくて二人で玄関を出る。
佳苗さんのにこやかな笑みに見送られながら。
マンションを出たところで私は立ち止まる。
「ここまでで良いから」
「送っていく」
もうお互いに話すことはない。
二人でいたって良いことなんてない。
傷つけ合うだけ。
私は仁くんの望むような振る舞いはできないし。
仁くんも私の願いを叶えてはくれない。