精一杯の背伸びを




 なんだか吸ってみたくなった。


 無性に。


 震える唇に煙草をくわえ、火を点ける。


 煙を吸い込んだ途端、むせて大きく咳き込んだ。


 慌てて花瓶に煙草の吸殻を入れ、あまりの苦しさにしゃがみこむ。


 咳のせいで目が潤み、そのまま机に顔を伏せった。


 苦いし、まずい。


 やっぱり私には向いてない。


 やっぱり私は子供なんだ。


 大人になりきれない。


 煙草なんて、もうごめんだ。


 咳は止まったのに、体が震えてどうしようもなくて。


 寒さのせいだ。


 二月なのだから。


 早く暖房を入れようと思うのに。


 私はしばらく顔を上げることができなかった。





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