精一杯の背伸びを






 もうそろそろ、仁くんと故郷で別れを告げてから八年が経とうとしている。


 途中で躓いたこともあったけど、ひたすら前を見て走ってきた。


 それが全て、無駄だったとわかった途端、どうでもよくなった。


 何もかもが。


 みんなに合わせて淡々と笑って過ごしていくのは楽だった。


 何も考えなくて良いから。


 ただ、いつか石のように固まった心が動き出す時が来たら。


 もしも、来たら。


 それを考えると怖かった。


 線を引いた。


 それを踏み越えて誰かが入ってくることが恐ろしい。
< 123 / 233 >

この作品をシェア

pagetop