精一杯の背伸びを
しかし、食事をほとんど取らない生活。
道場に通わない生活が続けば、体力は落ち、すぐに息を切らした。
膝を押さえ、荒い息を吐きながら視線を横に向ける。
そこには、平然と伸びをしている榊田君がいた。
「なんだ。もうジョギングは終わりか」
馬鹿にしたように笑う。
榊田君を追い払うには、話を聞くのが最善だ。
彼は自分を絶対に通す。
「話が、あるんだよね?私の、話を聞くためなら、必要ないわ」
まだ息が整わない中、伝える。
仁くんのことを聞かれるのは嫌だった。
それだけは絶対嫌だ。
「ああ。話があるだけだ。お前に何があったかなんて興味ない」
「そう」
それなら、良い。
明日から二週間はアルバイトがないから一人でいられる。
この瞬間さえ我慢すれば。