精一杯の背伸びを
「なら尚更出かけないと。お祝いなんだから」
「お願いだから休んでよ。あのね、その代わり、私が夕食作って良い?」
チャンスだ。
家庭料理なら何でも作れる。料理の腕を見せる機会が早くも巡ってきた。
しかし、
「小春が?」
彼があからさまに苦々しい顔を見せたことに私は思わずムッとして、
「何、その顔。ちゃんとした物作れるもん」
「悪いが、想像がつかない」
「とにかく私が作るから!」
悪びれる様子もない彼に私はそっぽを向いた。
彼が忍び笑いをしているのがわかって、余計にムッとする。
「なら、双方の意見を尊重して、俺はこれから遠慮なく寝させてもらう。それからお祝いに夕食を食べに行く。これが一番良い案だ」
「そんなに私の料理が…」
彼の方に顔を向け、抗議の声を上げようとするが、頭にぽん、と手を置かれて遮られた。
「お祝いだから。小春の手料理は別の機会に」
彼に目をのぞき込まれ、視線が交わったことに動揺した私は、そのまま頷いてしまった。
なんか彼に踊らされている。
そう思うと悔しくて、彼を睨みつけるが、 穏やかに微笑むばかり。
私は降参するように、ため息を吐いた。