精一杯の背伸びを





 榊田君は勝手だ。


 怒鳴りつけてやりたかった。


 怒りで、心が動き出しそうになる。


 きっと動いたら最後だ。


 仁くんのことを考えてしまう。


 仁くんのことで頭がいっぱいになる。


 そしたら私はどうなる?


 私は仁くんを。


 だからこのままでいたい。








 必死にコートを強く握り締め、感情を押さえつける。


 早く帰りたい。


 このまま榊田君と一緒にいたら。


 心が動き出したら。


 私は仁くんを。
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