精一杯の背伸びを
思い出の地
「もうダメ!スキーってこんなに難しいものなの!?私、一生滑れる気がしない」
尻餅をつき、泣きごとを言う小夜ちゃんに手を差し伸べる。
「最初は誰だってそうだよ。休もう。もうそろそろ三人とも降りてくるし」
私は小夜ちゃんの肩をたたき励ました。
小夜ちゃんは申し訳なさそうに私を見る。
「小春ちゃんも滑ってきて。私は一人で平気だから。私の相手なんかしてたら楽しめないよ?」
「私もそう得意じゃないし」
小夜ちゃんは苦笑する。
「嘘。小春ちゃんはここが出身地で、運動神経が良いもの。滑れないはずがない」
そこまできっぱり言われて私が苦笑してしまう。
「確かに滑れるけど。二人を見ていると自分が雪国出身だとは思えなくなるよ」
二人とは、榊田君と朔ちゃんだ。
スノーボードもスキーも自在に操り、華麗に滑っている姿を見ると彼らが雪国の出身者のようだ。