精一杯の背伸びを



朝、私を迎えに来た榊田君とは、会話どころかあいさつさえ交わしていない。


 視線も交わさない。


 そんな私を、榊田君は気にすることもなく平然としたものだ。


 朔ちゃんたちに「喧嘩でもした?」と尋ねられ、頷いた。


 私が一方的に榊田君に怒りを感じているだけだが。


 別に思い出の土地に来たからといって、仁くんを思い出したりしない。


 ただ、この煩わしいさがたまらなく嫌だった。


 榊田君のわがままに何で私が付き合わなければならないのか。


 ため息と一緒に憤りを押し殺した。


 当然、女の子に囲まれて不機嫌な榊田君を見ても助けたりしない。


 これ以上、榊田君に振り回されるのはごめんだ。


 鬱陶しい。


 煩わしい。


 心に重く圧し掛かる。


 一人になりたい。
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