精一杯の背伸びを




 コートだけ着て、庭に出る。


 ホテルに入った時は降っていなかったが、ぽつりぽつり雪が降り始めたようだ。


 冷たい空気が輪郭をはっきりさせる。


 足跡もついていない雪を踏みしめて歩く。


 あまりに綺麗で。


 ふんわりしていて。


 そのまま倒れこむように寝転がる。


 空を見上げると思った以上に雪が降っている。


 頬に雪が落ち、溶けていく。


 あまりの心地良さに久しぶりに心からの笑みが口元を模った。








 夕暮れだった。


 空が薄い闇に覆われようとしていた。


 西のほうに最後の輝きであるオレンジ色の夕焼けが見えた。


 その最後の輝きはとても綺麗だった。


 大好きなオレンジ色を膝を抱えながら眺めていた。


 闇は見ないように、じっと。




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