精一杯の背伸びを
そんな薄気味悪いものがひっかかり続ける。
そしてお風呂を済ませベッドに座った時、大事なことを忘れていたことに気づいた。
そう、告白をしそびれてしまったことに。
タイミングがなかった。
そういう雰囲気でもなかった。
最初、突然彼が現れたことに動揺して、それどころではなかった。
それで頭から抜け落ちた。
言い訳がましい言葉が次々出てきて、本日何度目かのため息と共に、枕に顔をうずめると、水分を含んでいる髪が私の頭に重く圧し掛かってきた。
重くなった頭で再会したばかりで告白もいきなり過ぎるし、機会はいくらでもあるではないか、と自分を励ました。
それに焦燥感の原因はそれだけではないような気がした。
まだピースが足りない。
決定的なものが。
そんな気がしたけど、仁くんが脳裏に思い浮かび思考は切り替わる。
時は確実に彼の中でも流れていた。
格好良くなったと思う。東京で7年も過ごしたからか、垢抜けた。
昔から、何気ない服装。そう、Tシャツにジーンズという何でもないものを着ているのに彼が着るとオシャレに見えた。
そして、無造作に下ろされた色素の薄い髪に光が当たると綺麗に輝いて独特の存在感が彼にはあった。
今日はカジュアルな服装だったけど、気を使っているのがわかったし、髪に寝癖がついたままなんてこともなかった。
そこが昔とは違う。
洗練された。
当然だけど顔付きや身体付きも変わって、さっき歩いていた時、女の人が何人も振り返っていた。自分のことで精一杯だったから、何人かなんてことはわからないけど。
7年間の歳月が、私だけでなく彼にも流れていたことを感じさせた。