精一杯の背伸びを


 でも、変わらないものも確かにあった。


 笑う時に少し下を向く癖。


 私をからかうときの口の端の上げ方とか。


 あの暖かい眼差しも。


 本質的なところは何も変わってない。


 私が大好きで仕方がなかった仁くんだった。


 早く、会いたい。さっき別れたばかりなのにもう会いたい。


 良く7年も我慢できたな。と今更ながら思い、彼が近くにいる喜びをかみ締めた。














 しかし私の願いも空しく、彼とまともに会えたのは3ヶ月近く後のことだった。


 要領の悪い私は、大学生活に慣れるのに必死だったし、彼もお仕事で忙しかったり。


 今では、大学、アルバイト、空手と生活パターンが確立できたし友人も多くでき充実した生活を送っている。
ただ彼に会えないことが、私に空虚さをもたらしていた。


 忙しくても疲れていても仁くんと会えるなら、私は時間を作るつもりだったし、元気になれる確信がある。


 でも、社会人の彼とはなかなか会えない。



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