精一杯の背伸びを
駅に向かうシャトルバスに乗り込む前に少し立ち話をして、みんなと別れた。
「えっ?」
私の手荷物がさっと奪われた。
「榊田君?ど、どうしたの!?」
「早くしろ。のろま」
彼はさっさっと歩き、シャトルバスに乗り込んだ。
「また、どこかで寝られでもしたら迷惑だ。送ってく」
シャトルバスが出発して、榊田君は口を開いた。
さっきから散々、降ろそうとしても無視されていた。
「もう、そんなことしないから。ねぇ?楽しんできてよ。最終日くらい」
私は必死に頼んだ。
このまま嫌な気持ちで旅行を終えて欲しくなかった。
だが。
「お前の意見は聞いてないし、お前に拒否権もない」
榊田君は椅子に深く腰をかけ、目をつぶった。
長いまつげが彼の目元に影を落とす。
私にはどうすることもできず、目を閉じた榊田君をしばらく見ていた。