精一杯の背伸びを
地元に向かう電車は、一時間に二本。
しかも鈍行の四両編成で一時間以上かかる。
その後、乗り換えもある。
幸いにして電車は待たなくて済んだ。
車内には、私たちの他には数人しかいない。
「ごめんなさい」
私は朝と同じように頭を下げた。
「何が?」
榊田君がそっけなく言う。
「送ってもらうこと」
「他には?」
「榊田君にひどいこと言ったこと」
「他には?」
「せっかくの旅行台無しにしたこと」
「水野。俺が欲しいのは謝罪じゃない」
苛立たしげに榊田君は私を見た。
「えっと」
私は戸惑った。
彼の意図することがわからない。