精一杯の背伸びを
「……私を選ばなかった、仁くんが憎い。あんな人を選んだ、仁くんが憎い」
涙が出はじめたら、もう止まらない。
榊田君がバスタオルを取り出す。
「洗ってある。お前にはバスタオルぐらいが丁度良いだろ」
ほれ、とバスタオルを私に手渡して、続きを促す。
「ぺったんこの靴だったの。私は踵の高い靴」
「ああ」
「料理だって基本さえできてないの。食べられないもの作って、平気でへらへらして」
「ああ」
「顔だって私のほうがずっと綺麗だし」
「ああ」
「スタイルだって私のほうが良いし。あの人は幼児体系だった」
「ああ」
「話しかたも、おどおどして自信なさげで」
「ああ」
「話し方だけじゃない。おどおどしてばっかりで何もできないの」
「ああ」
「子供みたいな笑い方して、馬鹿みたい」
「ああ」
榊田君は、私の話に相槌を打つだけ。
何も言わずに聞いてくれる。
人を見下している、私を軽蔑もせず、ただ淡々と。