精一杯の背伸びを




 ひっく、ひっく、と呼吸が定まらずに苦しい。


 苦しい。


 苦しい。


 何で、私じゃないのかわからない。


 どうして、あの人なのかわからない。


 私は何をしていたのだろうか。


 仁くんにふさわしくなりたいと私は。


 心が動き出してからそればっかりを考えている。


 それでも答えはでない。



























 私の呼吸が整い始めた頃、榊田君がぽつりと言った。



「水野。そんな女を選んだ仁でも好きなのか?」



 私はぱっと、バスタオルから顔をあげて、榊田君を見る。


 視線が交わる。



「それでも仁が好きなんだろ?」



 榊田君は、私が何て答えるかわかっているようだった。


 仁くんが憎い。


 憎くて憎くて、許せないのに。


 私は彼が好きなのだ。


 何よりも誰よりも愛している。


 そう心が囁く。


 それが私を絡めとって、縛り付ける。


 苦しい。


 息もできないほど彼を愛している。



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