精一杯の背伸びを
第3章
母は強し
電車を降り、携帯を見たら、お母さんからメールが届いていた。
どうやら、ここまで迎えに来てくれるということだ。
乗り換えの手間が省けた。
榊田君にそれを伝えるが。
「水野の場合、身柄を引き渡すまで何をするかわからない」
つまりは、一緒に待ってくれるらしい。
二人で、待合室に入り、ストーブの前を陣取った。
私たちのほかには、お姉さんと売店のおばさんがいるだけだった。
お互い、何も話さなかった。
私はぼんやり外を見る。
もう三月も半ばだというのに吹雪いている。
そう珍しいことではないけど、お母さんが遅れているのはこのせいだ。
靴を脱いで、膝を抱え、顔を埋める。
そうやって、丸まっていると落ち着いた。
古いストーブのカタカタという音と吹雪の音が眠気を誘う。
「おい」
榊田君に肩を叩かれた。
立って、ぺこりとお辞儀をしている。
さっきまでいたお姉さんはもういなくなっていた。