精一杯の背伸びを
だが、お母さんが榊田君の後ろ襟をがっしり掴んだ。
榊田君は唖然とし、お母さんを見た。
「ごめんなさいね。うちの娘ったら本当に気が利かなくて」
やはり榊田君をうっとりと、見つめる。
これは。
「小春。あんたはどうしてそんなに気が利かないの?せっかく送ってきてくれたのに、この吹雪の中、帰すなんて」
お母さんは憤然とした。
確かにそうだ。
けど。
「お母さん。榊田君を目の保養にしたいだけでしょ?」
悪びれる様子もなく、お母さんは榊田君に再度目を向ける。
「榊田君っておっしゃるの?本当にこんな娘で申し訳ないわ。私に免じて許してやって?」
もうお母さんを止めることは無理だ。
榊田君はわけがわからないながらも、頷いた。