精一杯の背伸びを
私は後部座席、榊田君は助手席に乗り込んだ。
もちろん、お母さんの指示だ。
お母さんは、榊田君に始終質問をし続けた。
もう声が生き生きしている。
「まぁ。それなら、こんな田舎で驚いたでしょう?雪ばっかりで退屈かしら?」
「中途半端に栄えたところに住んでいたんで、かえって、こういう静かな土地が羨ましいです」
榊田君は、そのお母さんの質問の嵐に嫌な顔一つせず、受け答えしている。
本当は、礼儀正しい人だから不思議ではない。
しかし、どうも普段の榊田君とは違うから違和感がある。
ついつい身を乗り出し二人の会話を聞き入った。
貴重な光景を見逃さないため。
しかし、すぐに眠くなり横になる。
二人の会話は途切れない。
榊田君のスリーサイズまで聞きそうだなと、ぼんやり思いながら眠りについた。