精一杯の背伸びを






「小春。起きなさい」



 目をこすりながら、車を降りる。



「俊君。寒いんだから、入って、入って」



 お母さんは榊田君の背中を押した。


 私が寝ている間に呼び方が変っていた。


 それから、榊田君の寝る部屋を片づけたりしていたら、あっという間に夕方になっていた。


 こう吹雪いていると朝も昼も夜もわからない。


 夕食の準備を手伝おうとしたら、お母さんと榊田君に止められた。


 病人は大人しくしていろ。


 ということだ。


 お母さんは、榊田君に手伝ってもらうからと、弾んだ声で言った。


 榊田君自身もお客さま扱いされるより、ずっと良いそうだ。


 私は自分の部屋に戻った。


 冷え切っているのに、暖房もつけずに引き出しを開けた。


 そこには、お墓参りの時に仁くんとおじさんにあげた残りの煙草が入っている。


 取り上げられることを考え、二箱買っていた。


 また、吸いたい衝動にかられる。


 もうごめんだ。


 そう思ったのに。


 ただライターがないから吸うことはできなかった。


 私は納得していない。


 だから諦められない。



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