精一杯の背伸びを




 だから。


 もう傷つくのは嫌だけど。


 そう思って一度は、線を引いた。


 だけど、私はまた仁くんに会いに行くのだろう。


 喧嘩しては、何度も繰り返してきた仲直りと同じように。


 私は。


 それに傷つくのは嫌だ。


 そう思っていても、もう傷ついている。


 仁くんに線を引いても、引かなくても。


 仁くんに会わなくても、会っても。


 傷ついている。


 それなら、彼の傍にいることを私は願う。


 仁くんのことも私は傷つけた。


 今度、会う時までに自分なりの答えが欲しい。


 彼に伝えるべき言葉を。


 仁くんは私に言うべき言葉は見つかったのだろうか。


 きっと見つかっていない。


 だから連絡がない。


 今のまま会ってもお互い傷つけあうだけだ。


 だから、今はこのままで良い。


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