精一杯の背伸びを
夕食は、始終和やか……
とはいかなかった。
お父さんが、榊田君に敵意をむき出しにしている。
威嚇する猫みたいだ。
つまりは、虎より迫力がない。
榊田君は、まったく気にする様子もない。
彼は周りを凍らせる能力を持っているのだから、猫の睨みなんて、ミジンコの睨みと一緒なのだろう。
さすがは榊田君。
彼に弱点はないかと思いきや。
お母さんには少し押され気味だ。
さすがはお母さん。
仁くんもお母さんには昔から頭が上がらない。
そんなお母さんがお父さんを叱れば、お父さんには従う道しかない。
しぶしぶ、威嚇をやめた。
食事が終わり、四人でお茶を飲んでいると、視線を感じた。
お父さんは私をじっと見つめては、目が合うと逸らす。
私を見つめる瞳も、あちらこちらさ迷っている。
何か言いたいことがあるが、迷っているようだった。
お酒を飲まなかったのは私に何か言いたいことがあったからなのかも。
「お父さんどうしたの?何か私に言いたいことあるんじゃないの?」
お父さんは、肩を一瞬上げた。
そうして、意を決したように口を開こうとした。
が。
「あなた」
お母さんに遮られた。
お父さんを鋭く睨みつける。
「だがな、やっぱり言っておいたほうが」
お父さんはお母さんの睨みに抵抗した。