精一杯の背伸びを
故意の偶然
吹雪は次の日になっても続いていた。
そして、その次の日も。
これでは、雪だるまもすぐに埋まってしまう。
せっかく、久しぶりに作ろうと思ったのに。
時間は単調に過ぎていった。
三日目の夕方になると雪はおさまりつつある。
だが、まだすごい雪。
天気予報は夜にはやむと言っていたが微妙な感じだ。
お母さんや榊田君と話したり、一人でぼっーとしたり。
隣町の温泉施設に行ったり。
つらつら、これからのことを考えては、思い出に浸り。
そんなことを繰り返した。
もうすっかり、お母さんと榊田君は仲良くなり、いつもの榊田君になった。
行儀良く微笑みを浮かべる榊田君は、間違いなく好青年で。
他の女の子が見れば悲鳴をあげるほど素敵なんだろうけど。
まぁ、無愛想でも悲鳴があがっているが。
とにかく、私には悲鳴をあげるほど胡散臭い。
それを、ぽろりと榊田君に漏らしたら行儀良く、微笑みを浮かべる榊田君になった。
一時間だけ。
これが限界らしい。
「吹雪じゃなかったら、友達に榊田君紹介したのにな」
私はこたつに頭をのせながら、みかんを口に放り込んだ。
行儀が悪いが、実家では寛ぎたい。
「俺を動物園のパンダにするつもりか」
書物から顔を上げ、私を睨みつける。
「こんな格好良い男の子を隠し持っていたら、村八分に合うわ」
お母さんが、なんとも微妙な冗談を言う。
言うべき言葉が見つからず、榊田君はため息を吐いた。