精一杯の背伸びを
どうしよう?
会わないで済んでも、仁くんはここに結婚の挨拶に来るのだ。
私に時間はそう残されていない。
諦められない。
納得していない。
仁くんに、あの人がふさわしいとは思えない。
歯がガチガチ音を立てる。
榊田君が布団を肩から被せてくれたけど、どうにもならない。
榊田君の言うことは正しい。
今は落ち着くことが先決なのもわかってる。
だけど、一度大きく乱れた心は恐怖しかもたらさなかった。
窓に、ふっと目をやる。
外の空気が吸いたくなった。
震える足で立とうとした時。
チャイムの音が聞こえた。
私は、はっと顔を上げる。
仁くんだ。
声を聞いたわけじゃない。
姿を見たわけでもない。
でもわかる。
気配でわかる。
ずっと、近くにいたから。
ずっと、一緒にいたから。
好きな人の気配だから。
もう私には少しの猶予も残されていなかった。
何で、今なのだろう?
ふらふら歩き、窓を開けると雪はすでに小降りになっていた。
予報通りだ。