精一杯の背伸びを




 布団にもぐりこんでいると、ドアがノックなしに開き、明かりが点けられた。


 仁くんではない。


 ほっとしながらも、寂しさを感じる。


 ちらりと布団の隙間から見ると、榊田君がドアに寄りかかり立っていた。



「夕飯ができた」



「…………」



「残念ながら、ここに持ってきてやることはできない。おばさんの命令だ。逆らったら俺の夕飯がなくなる」



「……榊田君は食い意地張ってるもんね」



「お前のために夕飯抜くわけないだろ。どうする?」



 どうしよう?


 さっきからずっとそればかり考えている。



「仁たちは明日の午前中には帰るそうだ。それまで篭城を続けるか?仕方がないから俺のするめを分けてやっても良いぞ」



 気のない声で榊田君は言う。


 マイペースな榊田君らしい。


 しばらく沈黙が続いた。


 布団の隙間から冷気が入り込んでくる。
















「なぁ。言っても良くねぇか?少なくても俺はそう思う」



 え?


 榊田君は、ベッドに腰を下ろした。


 ベッドの軋む音がする。



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