精一杯の背伸びを
「で、どうする?」
布団から、頭だけ出す。
「行く。仁くんの顔が見たい」
そうだ。
隠れていても、どうしようもない。
自分を嫌いになりたくない。
まだ、仁くんに言うべき言葉は見つからない。
だけど会いたい。
やっぱり、喧嘩をした時と一緒の行動を私は取るのだ。
「なら、髪ぐらい梳かしてから来い。その見るに耐えない顔はどうしようもないんだから」
それだけ言うと榊田君はさっさと、部屋から出て行った。
おなかが空いて私に構う時間も惜しいらしい。
階段を一歩一歩ゆっくり踏みしめる。
こんな風に私は一歩一歩着実に歩んできた。
踏み外さないように。
仁くんや榊田君のように颯爽と駆け上がっていくことはできない。
だけど着実にやってきたはずだ。
それなのに、知らぬ間に踏み外していた。
どこで、何を間違えたのか。
それを正せば、チャンスはある。
どこで私は間違ったのだろう。
障子を開けると、そこには仁くんがいた。
憎くて、でも大好きで、ずっと会いたかった人が。