精一杯の背伸びを
「あら?この子は二人の邪魔をしたのね?申し訳ないわ。昔から仁君、仁君ってうるさくてね。格好良い男の子に目がないのは私譲りなのよ。こればっかりは許してやって?ほら、こっちの彼も素敵でしょ?もう仁君並の容姿がいるなんて考えたこともなかったわ」
お母さんはひたすら一人で喋り、榊田君ににっこり微笑んだ。
「ありがとうございます」
唸りながら榊田君は返した。
榊田君もお母さんには頭が上がらない。
ご飯が食べられるかはお母さん次第だから。
「本当に素敵です。はい。まったく。私もびっくりです。はい」
佳苗さんは首をぶんぶん縦に振る。
「でも、東京にはこんな格好良い男性がたくさんいるのかしら?私も東京に住みたいわ。どうなの?やっぱりいるの?」
お母さんはうっとり、仁くんと榊田君の顔を見てから、佳苗さんに真剣な目を向けた。
「い、いいえ。とんでもない!仁と榊田さんは特別です。べ、別格です。私も二人以外お目にかかったことがありません!」
お母さんは、まぁ、と小首をかしげ清らかな笑みを浮かべる。
「佳苗さん。それは惚気ね。結婚目前のカップルは熱々で羨ましいわ。まして、東京でも二人しかいないような美男子の一人と。ねぇ?小春?」
空気はもう澱みようがなかった。