精一杯の背伸びを







 お父さんが咳払いをした。




「おい。佳苗さんをからかうのはよしなさい。申し訳ない。母さんに悪気はないんだ」




 それは、佳苗さんというより、私に向けられた言葉だった。


 悪気がない?


 もう我慢できなかった。




「お母さんは仁くんたちが来るの明日の夜って言ったわ」




 これのどこが悪気がないのだろう?


 私の怒りに震える声が周囲の温度を下げる。




「あら?そんなこと言ってないわよ。小春の聞き間違え」




 仁くんや榊田君でさえ、敵わないお母さんだ。


 私の怒りなんて、素知らぬ顔。




「おばさん。数時間前、確かにそう言ってましたよ」




 榊田君がすかさず同調してくれた。




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