精一杯の背伸びを





「自分でもそう思います。小春の喜ぶ顔が見たくて。昔から」




 優しい声が耳を掠めた。




「そうなの?」




 佳苗さんは興味津々だ。




「そうなんだよ。仁はケーキのいちごは小春にいつもあげてたしな」




 お父さんもここぞとばかりに場を和ませようと必死だ。




「そうね。なんでも小春のお願いごとは叶えてたわね。こっちが見てて呆れるくらい仲良しでね」




「仁はいつも小春さんの話をしますから想像がつきます。自分のこと自慢するみたいに」




 佳苗さんは肩をすくめて仁くんを見た。


 仁くんも佳苗さんを見る。


 私はその光景を見ていたくなくて顔を俯かせた。




「あら?お世辞じゃなかったの?仁君は誰でも褒めるから小春のこともお世辞かと私は思っていたわ」




 榊田君が、漬物のきゅうりをポリポリ噛む音が聞こえる。


 会話が弾み出して、心置きなく食べている。




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