精一杯の背伸びを




「まさか。小春にお世辞なんて」




 私は魚を見つめながら、昔を思い返した。


 一緒にご飯を食べていた頃、今と同じように私のお皿にのせてくれた。




「仁くん。私は仁くんにとって特別だよね?そうだよね?」




 そう、何にも変わらない。




「もちろんだ。今も昔も小春は特別だ」




 昔と変わらない、穏やかな大好きな声。


 そうだ。


 今も昔も変わらない。


 変わらないんだ。


 それが答えだ。


 もうあの時、彼の前で泣いた時に。


 答えは出てたのに私は気づかなかったのだ。


 それでも、私は。


 昔と同じように彼を愛してる。


 昔と同じように駄々を捏ねて願いを叶えようとする。













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