精一杯の背伸びを





 皮肉な話だ。

 
 彼が知らない一が、私が一番知って欲しかったことだったなんて。


 私の恋心に気づかないなんて。


 誰でも気づくことに。


 一番、叶えて欲しい願いごとに気づかないなんて。




「ねぇ?私たち傍にいすぎたね。傍にいることで逆に気づかないことってあるんだね。他の人なら誰でも気づくのに。私のことを一番知っている仁くんが気づかないことがっ!これなら幼馴染じゃないほうが良かった!!」




 私は涙が溢れていることも構わず叫んだ。


 泣きながらも笑っていた。


 笑うしかない。


 自分を嘲るように笑うしか。


 髪が頬に貼りつく。


 ずっと、一緒にいた。


 そのかけがえのない時間が、今の私を苦しめるなんて思いもしなかった。



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