精一杯の背伸びを
「おかしいわよっ!!何でうちに結婚の挨拶に来るのよ!?仁くんも佳苗さんも無神経だわ!!」
もう、頭の中がぐしゃぐしゃだった。
叫んでは頭がくらくらして、身体の感覚がなくなっていく。
それと比例して、感情だけがむき出しになる。
「家族を祝えないなら、出て行きなさい。あんたがぶち壊す権利なんてないのよ」
私は涙で濡れた髪をぎゅっと握り締めた。
その手は、怒りと憤りで震えていた。
「聞こえなかった?出て行きなさいって言ってるの!」
お母さんの怒鳴り声が耳に木霊する。
「おばさん。小春を責めないでください。俺が悪いんですから」
彼の焦った声がどこか遠くに聞こえる。
「何も、そんなに怒鳴ることないだろ。小春も落ち着きなさい」
「あなたたちがそうやって甘やかすから、こんな子になるのよ!本当に情けないやら、恥ずかしいやらで、こっちが泣きたいくらいだわ!」
私だってこんなところにいたくない。
彼に憎しみをぶつけることしかできない。
喧嘩したら仲直り。
昔は曖昧に笑いあって、すぐに元通りだったのに。
こんなところだけ、昔と違うなんて。
仁くんと肩がぶつかったが構わず走った。