精一杯の背伸びを
もうダメだ。
もう私は頑張れない。
もう走ることはできない。
ダメだ。
一度そう思ってしまったら、もう、がむしゃらに走れない。
前を向いて走れない。
私に向けられる瞳は優しさに溢れている。
だけど。
佳苗さんに向けるのと同じ瞳が私に向けられることはない。
ただの悪あがきだ。
駄々を捏ねて。
泣いて喚いて、仁くんにねだっても。
私の望むものは手に入らない。
何を犠牲にしても欲しかった。
そう願ったものは手に入らない。
でも。
泣いて喚いてぶち壊しにした。
仁くんだけが幸せになることはない。
不公平だ。
仁くんが幸せになるなら、私も幸せにならないと。
彼に置いてきぼりにされるのは、もう嫌だ。
こんなことをしても彼が私を嫌いになることはない。
一層、失望して見放してくれたほうが良いのに。
彼は私を見放さない。