精一杯の背伸びを
「それは脈ありだ!というか絶対仁兄も小春が好きだって!車の助手席に乗せるのは彼女に決まってる」
どんな理屈かさっぱりわからないのに、寛太の言葉を喜んでいる自分がいる。
寛太マジックか。
寛太は興奮し、さらにまくし立てる。
「ばばぁどもが結婚の挨拶とかそんな噂をしたのは二人がお似合いだったからだし、そういう話が本当になるのも近いな!」
「寛太はおおげさ。でもすごく元気がでた」
私は笑いながら、寛太と付き合っている彼女はいつも笑ってばかりに違いないと思った。
「おい。ご機嫌だな」
仁くんだ、と声がした方角に目を向ける。
「仁くん!」
「仁兄。久しぶりだな!」
彼は長い足でスタスタ歩き、私たちにあっという間に追いつく。
そして、何も言わずにいきなり寛太の頭を小突いた。
「何すんだよ!?」
「ただのあいさつ代わりだ」
しらっと彼は言ってのけた。
「……昔の仕返しだな」
「おっ、少しは賢くなったな。ご名答。小春をまた苛めているのかと思ってな」