精一杯の背伸びを



「今の小春は強くて、誰かに苛められるタイプじゃねーよ。昔の小春の面影ばっかり追ってないで今の小春を見ろよな」



 寛太らしくない大人な発言。


 私以上に仁くんは驚いたように寛太を見つめ返した。



「へへーん。俺は仁兄より大人なんだ。俺の方が結婚早いかもしれないぞ!!うかうかしてんなよ」



「お前、彼女がいるからって生意気な。……っと、小春大丈夫か?」



 寛太の身ぶりに身体が当たり私がよろけると、すぐに仁くんは私を抱きとめる。



「ありがとう」



 彼は本当に紳士的で優しい。



「……俺がお邪魔虫みたいじゃねーか。小春。仁兄がそこまで優しいのはお前だけだぜ。そうだろう?」



 からかうように寛太は仁くんを肘で突くけど、彼は大人の余裕で苦笑いした。



「自分が一番わかってる。小春しか目に入らなくなるみたいだ。今も昔も」



「……えっと、それはどういう意味?」



 彼に抱かれた肩の熱が全身へと行き渡る。



「小春は知らなくていいんだ」



 優しく誤魔化すように微笑む仁くんに、何故だか鼻がつーんとした。




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