精一杯の背伸びを
「二人で勝手にやってくれ。俺は帰るからな。またな」
私たちの背中を叩くと、ガキ大将の見本のような悪戯な笑みを浮かべて寛太は去っていった。
それを少しの沈黙で見送ると、仁くんは感慨深げに言うのだ。
「おばさんから寛太のことも聞いていたが、七年の月日は恐ろしいな。小春と寛太を見ていると本当に成長していて」
彼は苦笑いして空を見上げるから、それに倣うと。
東京では見れないたくさんの星が私たちを照らしていて、ここがやっぱり私の故郷だと実感した。
きっと彼も。
「明日はどこに行きたいんだ?海にするか?」
仁くんは私に聞いてきた。
「う~ん。別に泳がないし。あのね、道場に行かない?」
「道場って、空手か?」
彼は不思議そうに私を見た。
「気が変わったの。手合わせしたいなって。ダメ?」
「別に小春が良いなら。体がなまってるからちょうど良いくらいだ」
「ならその後に温泉に入りに行こう。仁、おまえ知らないよな?隣町にできたんだぞ」
お父さんは私にお酒を注がれ上機嫌に、言った。
たいして飲んでもいないのに酔っている。