精一杯の背伸びを
「それはそれは。そいつも運のつきだな。小春。一つだけ忠告だ」
「……何?」
寝転びながら仁くんと視線を合わせる。
「いくら小春が強くなっても小春は女の子だ。男には注意しろ。特に、そいつみたいな小春が勝てない男には」
その心配は私を女性として見てくれている証のように思えて、彼の生真面目な表情とは対照的にへにゃとした顔になってしまう。
「榊田君は大丈夫だよ。女性には困ってないし」
彼がお説教をするのが吊り上った眉でわかったから私はそれを制するように言葉を重ねた。
「わかった。男性には注意してるよ。自然に私だって警戒くらいはするんだから」
そう、仁くん以外には。
それから二日後、仁くんは一足先に東京へ戻った。
今度から定期的に帰ってくることを約束させられて。
私はアルバイトが始まるまで少しあるから、数日をこっちで過ごすことにした。
課題もなく平和な夏休みを友達と出かけたり、道場に通ったりと楽しんだ。