精一杯の背伸びを
『すごいね、榊田君。詰めものを見破るなんて只者じゃない』
『ちょっとそこ!?あんたはその場にいなかったから、そんなこと言えるのよ。もう室長も含めみんな青ざめて何も言えなかったわよ』
榊田君だけが平然としている姿が目に浮かぶ。
『で、どうなったの?』
『佐々木さんが榊田に平手打ちしようとしたんだけど、榊田のやつ、さっと避けて。佐々木さんは飛び出していった』
『榊田君も本当に容赦ないね。怖いもの知らずというか』
『あいつのせいで、佐々木さんの受け持っている授業を肩代わりする羽目になったのよ。まぁ、半分は榊田に押し付けたけど。あんたもコマが増えるからね。罪のない私たちでさえ被害被ってるんだから、全部押し付けないだけ感謝してよ』
『ちょっと、それじゃ私に罪があるみたいじゃない?』
『小春がいないせいで、こうなったんだから。榊田のやつ、あんたがいないから不機嫌ったらありゃしない。本当に愛されてるわね』
電話越しに朔ちゃんはからかうように笑った。
榊田君と契約を結んだときは、まんざらでもなかった。