精一杯の背伸びを
不満と満足
残り一ヶ月の夏休みは大学がないだけで、何も変わらず平和に過ぎていった。
五人での遠出も計画には出た。
だけど結局アルバイトで日程が合わなく、行けずに夏休みは終わりに。
春休みは泊りがけでスキーに行こうと、広君が今から日程を決めておこうとした。
だが榊田君と朔ちゃんが口を揃えて早すぎだと主張し、広君は二人の口に完敗した。
相当、夏休みに遠出できなかったことが心残りらしい。
一番夏を満喫していたような気がするけど。
その証拠に私たちの中で唯一日焼けをしている。
何でも彼女と海に行ったとか。
それでも、物足りないとは。
広君のフットワークの軽さはすごい。
少しは仁くんも見習って欲しい。
そんなことを、ついつい思ってしまう。
仁くんとは東京に戻ってから、だいたい一ヶ月に一度会えるか会えないくらいだ。
一週間に一度は会いたいが、これはどうしようもない。
東京に私が住んだら、仁くんがまだ故郷にいた頃のようにずっと一緒にいられると思っていた。
いや、それを望んでいた。
そんなことは無理だとわかっていたけど。
でも、こんなに会えないとは予想外だ。
仁くんと会えないからって、何が起こるわけでもない。
自分の面倒は自分でみられる。
頼る必要もない。
友達だっている。
すごく、すごく楽しい。
だけど。
だけど仁くんと会えないことに、どうしようもない苛立ちが募る。