精一杯の背伸びを
「どうして私には電話しないのよ!?どういうことよ。はっきりしなさいよ!」
そう詰め寄る朔ちゃんの声と、必死に弁明する広君の声がした。
朔ちゃんの剣幕も、地獄の犬は食わないなんて失礼なことを私は思った。
広君はあまりの剣幕に榊田君に助けを求めている。
「上原に頼むなんて、いくら広也が馬鹿でもしないだろ?当然だ」
いつも榊田君と朔ちゃんがタッグを組んで広君を黙らせるのに、今回は広君の味方にまわったようだ。
広君は、今榊田君に援護を頼んだことを心底後悔していることだろう。
そんな仲の良い三人の嵐のような会話をテーマ曲に私と小夜ちゃんは、和気あいあいと料理を作った。
この思い出のように、仁くんに抱いている不満も、時が経てば良い思い出に変わるのだろうか?
仁くんに笑いながら、あの時は……なんて話す時が。
きっとこれから先、ずっと二人で過ごすようになれば、そう思える。
それなら今、こう不満を抱えるのも悪くないのかもしれない。
一人であれこれ考えるより、こうして五人で笑っている時のほうが物事を良い方向に考えられる。
今度、仁くんに会っても笑っていられる。