精一杯の背伸びを

上手くいかないことだらけ






「車じゃないの?」



 私は寒さに身を竦めながら聞いた。


 私の家まで迎えにきてくれるというから車だと思ったのに、仁くんの車はどこにもない。



「混むだろ?電車にしよう」



「寒いから車が良かった」



 本当は彼と二人でのんびり話しながら行きたかっただけ。


 唇を尖らす私に仁くんは苦笑した。



「雪がないだけマシだろ?ほら、早く行こう」



 クリスマス前の日曜日だからか遊園地はカップルや家族連れが多いような気がする。


 これだけ大規模な遊園地に行くことは田舎育ちの私にはめったにない。


 この遊園地だって、小さい頃に私と仁くんの家族で一度行ったきり。


 二人だけで行ってみたいと、高校の頃テレビでこの遊園地を見るたびに思っていた。


 ジェットコースターに二つ乗った時点で仁くんが根をあげた。


 ちょうどお腹も空いたし、レストランに入った。



「仁くん大丈夫?ジェットコースター苦手だったけ?」



 顔色が優れない仁くん見ると相当苦手だということがわかった。



「いや、まったく」



 彼はそんな強がりを言うから私は笑ってしまった。



「自分の顔見てから言ってよ。別にからかったりしないよ」



「小春こそ自分の顔みろよ。からかいたくて仕方がない顔してる」



 仁くんはむしろジェットコースターが好きだと思ったのに苦手だとは。


 子供の頃と好きなものは違ってくるから当たり前か。


 そんなに気にも留めなかった。





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