精一杯の背伸びを





「だから平気だって。どうしたら許してくれる?来週また行こう。それじゃダメか?」



 そういうことじゃない。


 仁くんはわかってない。


 怒りと悔しさと、憤りで、カッとなって私は怒鳴った。



「私は、どうして言ってくれなかったのって聞いてるの!何でって!質問に答えてよ!」



 顔を上げ、彼と目を合わせる。


 怒鳴ったからか、目が少し潤む。



「約束は守るものだろう」



 仁くんに動揺はない。


 私だけこんなにも感情的になっている。



「そんなこと聞いてるんじゃない!」



 彼は短く息を吐いて、私を見据える。



「なら言わせてもらうが、小春は俺が寝不足だから会えないって言って納得したか?」



「したわ」



 私は即答する。


 彼は耳の後ろを掻きながら、ため息を吐く。


 私に呆れている。


 それがすぐわかった。


 昔からそうだったから。


 彼が口を開く。



「俺が全面的に悪い。だがな、小春」



 私は目を逸らしたいのに、それができなかった。


 彼と視線が交わる。



「仕事で会えなくて不機嫌になる小春が納得したとは思えない。約束を守っても、守らなくても会うたびに不機嫌になられて俺がどう思うか考えたことあるか?」



 彼の顔に苛立ちが見え隠れする。



「俺にどうしろって言うんだ?小春、もう少し大人になれ。昔とは違うんだ」



 涙がこみ上げてきたのが自分でもわかった。


 仁くんの顔がぼやける。


 昔からそうだ。


 彼に怒られて泣いてたっけ。



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