精一杯の背伸びを
「なら、どうして昔のままなの?私、仁くんがいない七年、頑張ったよ?できる限りのことしてきたっ!まだ努力が足りない!?」
涙が止まらぬ目で彼をまっすぐ見る。
彼はひどく当惑しているのが見て取れた。
やめろ、と心のどこかでブレーキがかかるけど。
感情の波をコントロールすることができない。
「どうすれば、私を、大人として扱ってくれるの!?何を頑張れば良い?何が足りない?私は精一杯やってきた!」
涙で頬に張り付いた髪を耳にかける。
答えは返ってこなかった。
「ごめん。おかゆ作って、あげられそうにない」
私はガバンを掴むと、呼び止める彼を無視して部屋を飛び出した。
自分でも何が何だかわからなかった。
何を言っているのか。
何を言いたかったのか。
ただ一刻も早く仁くんのいないところに行きたかった。
わき目を振らず、全速力で走る。
何もわからず。
ただひたすら。
だが、走っているうちに足が縺れ転んでしまう。
そこで、はっとして涙が溢れている目で辺りを確認する。
住宅が立ち並んでいるだけ。
人通りもない。
駅とは違う方角に来てしまっていた。
起き上がり、怪我の程度を確認する。
右手に擦り傷があるだけで問題ないようだ。
転んで、驚いたせいか涙は止まった。