精一杯の背伸びを





 私にとって周囲のその反応は苦笑するものではあったけど、自分でも成長したとは思っている。

 
 十一歳の頃の私とは違う。
 
 
 中見も外見も成長したと。


 成長するための努力をしてきたが、その言葉は絶対に口には出さなかった。

 
 私が小学校にあがる前のことだっただろうか。

 
 その前後にどんな会話がされていたかは忘れてしまったが、




「頑張ったなんて言う言葉は、他人が評価することであって自分で言うことではないぞ」



 
 彼は私の頭を優しく撫でながら言った。

 
 これはおじさん、彼の父親の受け売りだったらしく、「偉そうなこと言うな」とおじさんに小突かれていたけど。


 その言葉の意味は当時の私には理解できなかった。


 だけど物心がついた時から彼の言葉は特別であり、それは記憶に残った。

 
 そして、頑張ったとか一生懸命やった、と口に出して言うことは私にとって幼さの象徴となった。


 周囲の人間に褒められることは幾度もあり、そのたびに素直に喜んだ。

 
 だけど他でもない彼に大人になったと認めてもらいたいたくて、褒めてもらいたくて、そのために私はこの七年間を費いやした。

 


 彼との再会がもうすぐ現実になる。
 
 
 今の私は成長して、自分に自信を持っている。

 
 だから、堂々と会いに行ける。






 

 
 春はもうすぐそこだ。






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