精一杯の背伸びを
「憶が一、仁くんが私を裏切っていたとしても、私にとって彼が絶対だから。彼を信じるから、やっぱり裏切りは存在しないよ」
「はぁ?じゃ、何か?お前は仁が、天を地だって言ったらそれを信じるのかよ?馬鹿馬鹿しい」
榊田君は吐き捨てるように言ったのを、私は間髪入れずに返す。
「もちろん。信じるよ」
仁くんが天を地だと言えば、私にとっては地になる。
例え、他の人にとってはどうであろうとも。
彼の言葉だけを私は信じる。
榊田君の目をまっすぐ見据え、きっぱり言い切った。
榊田君のまとう空気が一気に変わる。
その眼差しは、ひどく冷ややかだった。
冷ややかな眼差しを向けられ、思わず、息を呑む。
でも、怖いくらい冷ややかな視線を自分に向けられているのに、私の心にそれほどの動揺はない。
私の心を揺さぶるのは仁くんだけなのだと思い知る。
「馬鹿が」
榊田君は私から目を逸らし、立ち上がる。