精一杯の背伸びを
再会
引越しの片付けより、何より彼の元に行きたい。
そんな気持ちで、アパートを出た。
逸る気持ちが、少しずつ不安に変わる。
何故だろうか?
昔の自分ではないのに。
それなのに、昔の自分に戻ってしまったようで、たまらなく不安になる。
「緊張しないで。落ち着け。落ち着け」
緊張しているに過ぎないと自分に何度も言い聞かせた。
彼がいなくなってから、ずっとそうやって自分の面倒はみてきた。
震える足。
思うように動かない指先。
強張る身体。
早まる鼓動。
そんな自分がまるで昔に戻ってしまったように思えた。
幼き私の幻影が脳裏にチラつく。
全部を無視して、ゆっくりと、だけど躊躇せずインターホンを押した。