精一杯の背伸びを





 彼の流し目は、色香漂う凶器だという女友達の発言をふいに思い出した。


 その色気を少しくらい私にも分けて欲しい。



「縁起でもないこと言わないで。少し切っただけでしょ?その考え古臭い」



 何となく気分転換で髪を切った。


 髪を切ったぐらいで気分爽快とまではならない。


 だけど、決心はついた。




「テスト終わったら会いに行こうと思う」



 それは榊田君に言うというより、自分に言い聞かせるものだった。



「ふーん。懲りてないのな」



 榊田君が容赦ないのは年が明けても変わらない。



「馬鹿ですから」



 自然と笑みがこぼれた。



「水野。笑ってるが、ここは縁結びの神を祭ってないし馬鹿を治す神でもないはずだ」



「別に縁結びを期待してきたわけじゃない。まぁ、恋愛成就を祈るし、お守りも買うけどね」



「俺も買うかな」



 私は目を引ん剥いて榊田君を見た。


 彼は平然と前を見て歩いている。





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