恋が都合よく落ちてるわけない

「鞄の中に、サンドウィッチや、
おにぎりが入ってるから
俺はそれ食べるよ」
と須田さんは、にやけて話す。


「なんだ、買ってきてあるんだ?」

ちょっと、落胆。

この人に、
犠牲的精神を発揮してもらって、
コンビニまで買いに行ってもらおう
と思ったのに。



「そりゃねえ、こんな天気だし。残るつもりなら、用意するだろう。普通」

何で、そんなに用意がいいんですか?



「いいな。用意してる人は」



「うそ。君、これだけ騒がれれてて、何にも用意してないの?
そりゃあ、大変だ。かわいそうに」

可哀想だと思うなら、恵んで下さい。



「隣で私が、須田さんが食べるのを見てたら、食べにくくないですか?」



「いや。全然。
むしろ、そういう方が面白いんじゃない?
ほら、例えば…ご飯、恵んでやるから、
言うこと聞けよとか」
須田さんは笑って答える。


なんですって
「はあっ?
須田さんって、ろくでなしなんですね」




「何だ、食いもん、何もないのか?」
さっきから、そう言ってるじゃないの。

須田さん、何か嬉しそう。



「その、サンドウィッチ美味しそうですね」
うーん。
空腹とずぶ濡れになるのを

天秤にかける。



「やってもいいけど、高くつくよ」
須田さんは、
サンドウィッチを、ほいっと投げる。
やっぱり、デコピンと同じじゃん。


「たかが、サンドウィッチ1つ、
恵んだくらいで鬼のよう。
人でなしって言われませんか?」


くっくっと笑って言った。

「よく言われるよ。ほら、これも」
須田さんは、
缶コーヒーを机の上に置いた。

袋を破り、私は、
サンドウィッチをたべた。
サンドウィッチは一瞬で消えた。

足りなーい。全然。
私は、また、須田さんに近づいた。


「どこか、
外で食べられるとこないかな。
できれば、ビールが飲めるとこ」

夢物語を口にしてみる。



「ああ、そうだな。

サンドウィッチ減ったぶん、
俺も足りないなあ」
どこまでも、引っ張るつもりだ。


「どこか、いいとこないですか?」



「このビルの前の通りに、
ホテルがあって、
そこなら地下に店があったはず」


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